グレードの高い税理士を探す方法
翌九四年一月には、こうした株主の要求に抵抗したといわれる社長が「解任」され、子会社であるTタンカーの社長が本社の社長に就任することになったと伝えられるに及んで、議論は社内の意見対立説から日米の企業比較文化論にまで発展して、見方によってはミニ黒船騒ぎのような様相を示しました。
もちろん、このTの「事件」の実際がどのようなものであったかは、外部者にはうかがい知れません。
私たちが考えたいのは、この一連の出来事で株主たちの要求が一○割配当の実施というかたちで表れたと伝えられ、多くの人たちがそれを信じたという事実です。
日本の企業経営についての伝統的ともいえる批判は、配当可能利益のうちのどの程度を実際に株主に配当するかを示す比率である配当性向があまりにも低く、企業経営が株主の方を向いていない、もっと株主重視の経営をすべきだというものです。
実際、日本の代表的な機関投資家である生命保険会社は、生命保険協会の名で、株主への配当を重視すべきだと毎年のように要望しています。
そして、こうした配当重視要求に対しては、新聞などの論調はおおむね好意的のようですし、引受証券会社間の申し合わせとして、公募増資を行おうとする企業に対し一定以上の配当性向を維持するよう条件をつけたりすることも行われています。
Tの出来事に限らず、配当をめぐるこうした状況をみる限りは、株主重視とはすなわち配当重視であり、それが企業の資本市場における望ましい企業のあり方だとする理解ができ上がっているように思われます。
ところで、理論的にみて、このような理解は正しいでしょうか。
株主に配当せよというのであれば、そうした配当可能利益は何も実際に配当してもらわなくとも当然に株主のもののはずです。
そうだとすれば、配当というのは、もともと株主のものである配当可能利益を、現金として株主に渡す、つまり、お金を右のポケットから左のポケットに移すようなものになります。
そう理解するのであれば、株主にとっては配当の多寡は本来どちらでもよい問題のはずで実際、株主重視の経営が徹底していると言われる米国でも、高い配当率が株主の利益であるという理解は必ずしも常識というわけではありません。
一九八○年代に急成長をとげたコンピューター会社のDEC社は、その急成長期を通じ、実現した利益は全て内部留保し現金配当をしていませんが、だからといって、株主たちから強い不満が出たり株式を売り浴びせられたりはしませんでした。
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